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凪池 シリルが時折ぽつぽつと呟く場です。 ゲームの話題が中心。日常ネタもそこそこと。 ちょっとずつ、何か書いて行けるといいなあ。

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第一回GA後期テーマ大賞応募作の第一話です。






例えば、ある日曜日。
特にすることもなく、陽だまりの中でぼおっとしてしまうと。
「くーろのっ♪」
声と同時に、ふわりと背後から抱きつかれる。
俺はまだ半分くらいぼぉっとしている。半分動いている頭が、あー、また姉か……と理解するが、背中をぽんぽんと叩かれる感触が気持ちよくて、んーまあいいか、という気持ちになる……。
数秒後、はっと我に返る。返ってしまう。そして思う。違う、俺はこんなふうに好きにされるつもりなんてないぞ!勘違いするな!今こうしているのは不覚を取っただけだ!と。
そうして、するりとその腕の中から逃れてみせ、ふふんと得意げに振り返って見せると、俺を抱きしめた姉は怒るでもなくただ困ったように笑っている。
俺はそのまま、ふい、と背中を向ける。
彼女は追いかけては来ない。まあそうだろう。先ほどの無防備状態ならともかく、警戒している俺を彼女が捉えるなどできるわけない。
それを寂しいなんて、思わない。これでいい。俺にだって、少しくらいは彼女を大切に思う気持ちはあるが、一日を彼女のために使うような奴には、俺はなれない。
なれないったらならないんだ、絶対に。

――俺、佐久間黒乃の佐久間家の人間に対する、特に佐久間真白に対する対応はどこか不自然で不可解なものであるということは自分でも多少は理解している。
分かっていはいるが……どうにもならないことなのだと、俺は思っている。
佐久間家の皆は優しくて、暖かくて……そして甘い。
そのゆるゆると包み込むような心地よさは、俺を惚けさせて、蕩けさせようとする。
だけどそれを感じるそのたびに、俺は強烈な敗北感を感じて、恥じ入り、それから離れようとしてしまう。
そう、これは、照れだとか、屈辱だとか、その瞬間に湧き上がる感情だけで説明がなされるようなものではなく。
きっともっと、根本的な、己の根幹に関わる部分で自分はそれに対して抗うように出来ているのだ、きっと。
……かつて、自分は独りだと、独りで生きていくのだと思っていた俺には。
どれほど仲良くされようとも、どれほど大切に思っても、だからと言って本気で心を許すなど、許そうとするなどできるわけがない。
だから。
おそらく唯一、そんな俺の葛藤を垣間見る奴はこんな一言で済ませようとするが――

「やー、クロちゃんってばあいかわらずツンデレだねー」

そんな単純な問題ではない。断じて。

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はぐれ雑文書き:凪池シリルです。
現在テラネット主催のウェブトークRPG Catch The Sky にてマスター活動中。ご縁がありましたらよろしく。
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